なんか書いてみたり 春香と千早姫3

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春香と千早姫3

12-23,2009

春香と千早姫」・「春香と千早姫2」の続きになります。未読の方は前の話から見ていただけるとうれしいです。

なんだかんだで続けちゃうんだね、書いてると楽しいものでヽ(゚∀゚)ノ
では、よろしくお願いいたします^^


※ネタをお借りした晴嵐改さんのSSも連載されていますよ!
春霞蒼月記 ~序~」「春霞蒼月記 ~其の一
こちらのほうがはるかに面白くてウギギ…w
当方と合わせましてどちらもよろしくお願いいたしますねー^^



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「私は」
 春香はすぐに答えようとしたのだが、言葉を選び損ねて口の動きだけが空回りした。
 まっすぐに向けられた三つの目線が痛く、春香はどう答えたものかと思案しながら頭を少し垂れた。
「面倒だから、やっちゃってもいいと思うな」
「こら」
 目だけで様子を伺うと、面倒だからと言ったのは金色の髪をした彼女で、それをたしなめたのは彼女の横に座るおかっぱ頭の女の子だった。
 金色の髪の彼女は少し目を細めて笑うような表情をしていて、その瞳の中に自分が映っているのかと思うと春香は生きた心地がしない。
「私は、千早姫に拾われた行き倒れです」
 その場から逃れたいと思うけども、そうしてしまったら色々とまずいことになることは容易に想像がついてしまって動くことができない。
 彼女たちも黙ったまま何も話さない。
 品定めでもしているかのような視線が痛い。
 痛みすら伴うような沈黙を破ったのは、誰かの吐息だった。
「行き倒れる前は?」
「山里に。とても貧しくて、人減らしのために外に仕事を求めて」
「忍びの里ではないのですか?」
「昔はそういうことをしていたかもしれませんが、今は貧しい山里です。忍者とかそんなことは」
「していないと? しかし千早姫を守られたその手腕は」
「あの時は必死で! 自分でも何をしたかはよく覚えていません」
 全て嘘ではない。しかし、肝心なことは言っていない。
 もし、千早姫を殺しにきたのではないか?などと訊かれてしまったときはうなずいてしまいそうなくらい追い詰められていた。
 彼女たちの沈黙が春香には痛い。
「春香? どこにいるの、春香っ?」
 不意にかけられた千早姫の声に顔を上げ、声を返す。
「は、はい。ここにいますっ」
 慌てていたために震えた声が出てしまい、内心は余計に慌ててしまう。
 相手に部屋に戻ってもいいかと目で問いかけると、彼女はかすかにうなずくと立ち上がって、あっという間に音もなく歩き去っていってしまった。
 そのことに安堵のため息をつき、部屋の中に入る。
 すると、母親でも見つけた迷い子のような今にも泣き出しそうな笑顔で千早姫が春香に抱きついてきた。
「よかった、どこか行ってしまったのかと不安になってしまったわ」
「ち、ちちちちちち千早姫」
「ごめんなさいね、こんな子供っぽいことをして。でも、こうしていると落ち着くわ」
 春香を抱き締めてくる腕は思いのほか強い。
 胸元に耳を近づけられると鼓動の音が聞かれそうで怖いから春香としては体を離せればと思うのだけども、彼女のその力強さとかすかにある震えが思い切るのを躊躇わせる。
「ごめんなさい、春香」
「いえ、大丈夫ですよ。千早姫が気が済むまで今夜は一緒にいますから」
 千早姫の背中に腕を回し、彼女の頭にかすかに頬を乗せる。彼女の力がかすかに緩み、少し震えが止まったことに春香はこうしてよかったのだと心底思えた。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「報告は以上になります」
「そう、ただの行き倒れね」
 少年のような容姿の少女――真はその言葉を受けて深く首肯する。
 目の前には自分の直接の上役である秋月律子は机にて筆を走らせているだけで、一向に真やその後ろに控えるおかっぱ髪の少女――雪歩や、獅子のような金髪をした少女――美希にも見向きもしない。
 真からすればそれ以上に語る言葉を持たない。次の指示が律子から下されるはずなのでそれを待つだけだ。
 あふぅと欠伸をする美希の声が書斎にかすかに響き、真は振り返って注意しようかと少し身動ぎしようとしたが、雪歩の彼女をたしなめる声が聞こえたので止めにした。
 筆を置く音がしたので真は律子のほうを見ると、両肘を机につき、その組まれた両手の上にアゴを乗せて思案するように目を閉じている。
「姫様が懐いていては引き離すわけにもいかず、かといってこの時期に不穏な要素はできる限り取り除かなくてはならない、か」
「はっ」
「ひとまずは泳がせておきましょう」
「よろしいので?」
 真は律子の言葉が意外に思えて質問を返してしまった。しかし自分のしてしまったことに気づき、「申し訳ありません」と畳につくほどに頭を垂れた。
「うむ、引き続き見張りは怠るな。何か怪しい動きがあればあの者を始末してしまっても構わない、以上」
「はっ」
 真は律子の言葉に改めて頭を下げる。
「あとは頼んだわよ。ああそれと、美希はここに残りなさい」
「はーい」
 真は立ち上がり、雪歩をうながして書斎の外へと出る。
 出るところで見た光景は美希が律子の膝の上に座ろうとしているところで、真としてはどういう表情をしていいのかわからなくて表情を隠すために頭を下げたまま襖を閉めた。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 自分の膝を枕にして眠る千早姫を見つめ続けて何刻経ったのか、春香は外が白んできたのに気づいて初めてそんなことを思った。
「私、なにやってんだろう」
 一方で満ち足りた気持ちがあり、一方でささくれ立った気持ちが存在していて持て余してしまう。
 これからどうするのが一番いいのか。
 そんなことを考え始めてしまうと目の前が暗闇に覆われてそのまま奈落にでも落ちていくような暗澹たる心持ちになる。
 何か良案はないのだろうか。
 足りない頭では出てきそうにないと思うと落ち込んでしまうが、まだ膝の上で眠る千早姫の顔を見つめているとそんな重たい思いも霧散していくのを感じて、なんて簡単な人間と自虐的な笑みが自然と出てしまう。
 今は起きるまで彼女の顔を眺めていよう。
 春香はそう思い決めると、その通りに実行することにした。

-Continued?-

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