なんか書いてみたり キスまでの距離

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キスまでの距離

11-25,2010

連夜の更新!
なんとなく、ちはゆき。





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 如月千早、15歳、女子高生。
 学校の最寄駅、そのホームは人がいないと、とても殺風景でこの季節は特に寒々しく映る。
 いかにも重たげな雲を溜め込んだ空は、天気予報で雪が降るかもしれないと言っていたのを確信させるほど。
 電車は出たばかりで、次のが来るにはまだ時間がある。
 鞄から音楽プレイヤーを取り出し、イヤホンを耳に差してスタートさせた。

 
  ♪ キスまでの距離 計り損ねて

    あなたの唇 見つめ続けてる


 風が吹いてきたと思ったら、震えてしまうほど冷たかった。
 体を震わせて、マフラーを耳まで巻き直す。
 なんとなく丸まりたくなって、近くのベンチに膝を抱えて座り込んでしまった。みっともないかもしれないと一瞬思ったが、すぐにそれを振り払った。
 

  ♪ 好きだって一言 言い出せなくて

    あなたの態度に 戸惑いっぱなし

    あなたとの距離 計り損ねて

    わたしはあなたを 見つめるだけしか...


 ふいに片方のイヤホンから聴こえてきていた曲が遠ざかった気がした。
「千早ちゃん?」
 そして、代わりに聞こえてきた声は心臓をドキリと高鳴らせた。
 気弱げで、それでいて誰の心にも優しく響く声音の持ち主を私は世界中でひとりしか知らない。
「萩原、さん?」
 顔を向けた先には、思っていた通りの彼女が微笑むような柔和な表情で立っていた。
 萩原雪歩、16歳、同級生。
 私が密かに想いを寄せる人、だ。


  ♪ いつだってその言葉を選択できず

    わたしの想いは隠れてしまう

    どうすればいいのか 隠れた自分にたずねることしかできなくて

 
 急に降り出した雪のせいでもないのだろうに、待っていた電車はまだ来ない。
 寒い中、二人で会話をするのだけど、私のほうがうまく言葉が出てこなくて途切れがちになってしまう。
 彼女が音楽プレイヤーに興味を持ったのをいいことに、ベンチで寄り添って音楽を聴くことにした。イヤホンを片方ずつ、二人の向き合っている耳で共有して。
「寒くない、萩原さん?」
「ちょっと」
 出した言葉が白く染まっていた。
 私は一度マフラーを外して、彼女と自分を一緒に巻いてしまう。
「少しぐらい、ましになるかしら」
「ううん、とっても」
 うれしそうにほほ笑む彼女につられるように私も唇を緩ませたと思うのだが、はたしてうまく笑えていたのかは自信ない。

 
  ♪ キスまでの距離 計り損ねて

    あなたの唇 見つめ続けてる


 気がつくと彼女が私の肩にもたれかかって眠っていた。
 起こしたいのに、そのあどけなさを感じさせる寝顔を見つめていたくなって、声がのどでせき止められたようになる。
 柔らかそうな唇が少し開き、そこから寝息が漏れ出てくる音がかすかに聞こえる気がした。
 彼女の唇。
 少し自分の唇を近づけさせれば、触れてしまいそうな。
 そんな距離が私を戸惑わせる。
 想いも告げていないのに、そんなことをしていいものか。
 しかし、想いを告げたところで、叶わなければこの距離すらももっと遠いものになるはずだろう。

 
  ♪ キスまでの距離 計り損ねて

    あなたの唇 見つめ続けてる


 誘惑に負けて近づけそうになったとき、駅のホームにアナウンスが響き渡った。
 それに起こされた彼女が寝てしまっていたことを照れたようにほほ笑む。
 彼女が何か言ったような気がしたが、なぜかイヤホンをつけられてしまい、よく聞こえなかった。自分の名前は言ったような唇の動きだったのだけど。
 先に到着するのは彼女が利用する電車のようだ。ホームに入って止まった途端に彼女はそれに乗り込んでいった。
「またね、千早ちゃん」
「ええ、また」
 小さく手を振る彼女が出発するまで私も手を振り返す。
 

  ♪ 好きだって一言 言い出せなくて

    あなたの態度に 戸惑いっぱなし

    あなたとの距離 計り損ねて

    わたしはあなたを 見つめるだけしか...


 彼女の姿が見えなくなると、私は音楽プレイヤーを止めた。


-END-


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