1枚絵で書いてみM@ster第3回参加作品「ドラマ『桜の家』」
03-29,2010
上のサムネの企画第3回参加作品になります。
あいかわらずな内容になってますね…よろしくお願いいたします。
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リツコは桜の木にもたれかかって座り、かすかにため息をついた。
ここは大豪邸ともいうべきリツコたち家族の住む邸宅、その一角にある大きな桜の木が植えられた場所。
すぐ近くでは今日妹のチハヤとその許嫁とが正式に婚約したことを発表するパーティが行われていて、リツコの家族や親族、親交の深さから招待された客達が歓談する声がかすかに聞こえてくる。
彼女は周囲の人間には「気分が優れないから」と言ってその場から抜け出し、一番桜の木が密集するこの場所へと逃げ込むようにしてやって来たのだった。
リツコの心に浮かぶのはチハヤの幸せそうに微笑む顔とその横でチハヤを支えるように寄り添う許嫁の笑顔。
そのさまを思い浮かべると祝福してあげたいのに、胸の内より沸き上がってくる感情から泣きそうになってしまう自分を抑えることはできなかった。
リツコは曲げた膝に顔を押しつける。
かすかに声を漏らしかけたとき、
「姉さん?」
不意に声をかけられ、リツコははっと顔を上げて慌てて手の甲で自分の目尻をこすった。
やって来たのはパーティの主役の一人である、リツコの妹のチハヤだった。
「やっぱりここにいた。探したわよ、体調悪いとか聞いたから」
チハヤは両手に紙コップを持っていて、その片方をリツコに差し出す。
「水で申し訳ないんだけど」
「ありがとう。パーティのほうはいいの?」
「ええ。彼がなんとかしてくれるって」
リツコのそばに座り、笑いかけるチハヤ。
しかし彼女の何気ない言葉にリツコはぐすっと鼻を鳴らす。
「あの人と寝た」
「え?」
リツコが何を言い出したのかわからず呆然とした表情をするチハヤは聞き返すしかできなかった。
理解できなかったチハヤに苛立つようにリツコは次の言葉を吐き出すように告げる。
「だからその、あなたの許嫁と寝たのよ」
さすがに理解してチハヤの表情は驚きの色に変わる。
「それって」
戸惑いに変化し、言葉を逡巡し、
「どうしてなの?」
チハヤがようやく出せた言葉は理由を尋ねるものだった。そこに怒りの感情は見られなかった。
「好きだったから。あの人がずっと好きだったから。あんたとの結婚式の前にどうしても、しておきたくて」
「姉さん」
「悪いとは思ってるの。あの人は責めないでやって、酔わせて私が無理やり迫ったことだから。お願いだから、あいつは悪くないから」
自分の思いを吐き出し、瞳に涙を滲ませるリツコ。
それを見つめていたチハヤは唇にかすかに微笑を浮かべる。
「かまわないわ」
「え?」
相手の言葉が理解できずに戸惑うのはリツコの番になった。
「その代わり、私に姉さんを抱かせて」
口元は笑っているのに瞳の色は真剣そのもので、チハヤの言葉が悪戯やお巫山戯ではない事を証明していた。
そのことに気づいた様子なのにリツコはチハヤから目を逸らし、「何を言ってるの」と言ってなんとか誤魔化してしまおうとする。
「私は本気よ。だって」
チハヤはそんな様子のリツコには構わず彼女の顔を自分のほうへと強引に向けると、
「ずっと昔から姉さんのことが好きだったんだから!」
その言葉とともにチハヤはリツコに抱きついた。
リツコは事態が飲み込めず、抱きすくめられたまま抵抗できずにチハヤを見つめることしかできなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その場面でエンドロールが流れ始め、次回予告では千早ちゃんが律子さんをベッドに押し倒す様子がちらりとだけ映る。
それだけで興奮してしまうピヨ。
次回が楽しみピヨピヨ。
このドラマは――インターネットでのみ配信されているのだけど――その後の展開は律子さんと千早ちゃんの関係だけに留まらず、脚本を見させてもらったところだと、なんと千早ちゃんの許嫁には実は男の恋人がいて、その子が嫉妬深い性格で登場人物を巻き込んでもう波乱の内容に!
「あ、小鳥さん。また仕事サボって何か見てるんですね」
「ピヨ!? り、りりり律子さん、これは違うのよ。あなたたちの仕事の様子を確認するためであって決して仕事したくないなーとかそんな……」
苦しい言い訳は最後までちゃんと言葉になってくれなかった。
ジト目の律子さんに対して「あははー」と乾いた笑いをするしかなく、まともに目を合わせられない。
「あー、これですか。せっかく最終回まで撮ったのに、次の回から配信しないことが決まちゃったんですよね。ありゃ、まだ発表してないのかな」
「へ?」
「涼のやつも嘆いてましたよ、せっかくがんばってあんな役をこなしたのにって。うわ、こんなこっそり次回以降の配信は予定してないって」
「ええー」
「ここまで見てくれた人にも迷惑でしょうし、明日にでもこちらからクレームを出しておきましょうか。まぁ、あんな内容がネットのみとはいえ流れるには無理があるだろうなとは思ってましたけど」
「ほんとうにー」
事務所のドアが開き、そこから千早ちゃんが入ってくるのが見えた。
「律子、今日はもう上がりでしょ、一緒にゴハンでも食べて帰らない?」
「もちろん、いいわよ」
2人とも体を寄せ合ってしゃべっていて、なんだかすごく仲が良さそう。
そういえば演技に関して千早ちゃんがすごく悩んでいて律子さんとよく相談していたような。その頃から2人でいるのをよく見かける気がする。
「じゃあ、小鳥さん。あまり残業しすぎないように気をつけてくださいね。お疲れ様です」
「お疲れ様です、小鳥さん」
「行きましょうか、千早」
「ええ」
どこに食べに行こうかとか楽しげに話しながらしっかり指を絡めた形で手をつなぎ、事務所を出ていく2人を見送る。
仲がよろしくて大変結構なことですねー。
あれ?
あの手のつなぎ方って、もしかして恋人つなぎ?
ええっ!?
-END-
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COMMENT
これはよい昼ドラですね!
もう人間関係がごっちゃまぜでどろどろで、まさしく「昼メロドラマ」といったところでしょうか。
次回は、次回は配信されないのですかcoro先生!うおお!しんぼうたまりません!
最後はお決まりのピヨちゃん落ちかな、と思いきや、実は実は…という話の流れ、先がなくても先を想像したくなってしまいます。
素晴らしいSSをありがとうございます!
もう人間関係がごっちゃまぜでどろどろで、まさしく「昼メロドラマ」といったところでしょうか。
次回は、次回は配信されないのですかcoro先生!うおお!しんぼうたまりません!
最後はお決まりのピヨちゃん落ちかな、と思いきや、実は実は…という話の流れ、先がなくても先を想像したくなってしまいます。
素晴らしいSSをありがとうございます!
許嫁は、痛い目に遭え!
劇中劇の設定はとても使い易く、
またアイマスの場合はメインキャラがアイドルなので、
ドラマ撮影という設定もとても自然に組み込める一方で、
使い方如何によっては夢オチレベルのガッカリ感に襲われるので、
それをどう回避するか、というのが捻り所だと考えております。
そこへ来て小鳥さんを出して『妄想オチ』と相互干渉を起こさせ、
結果として現実に帰結させるというのは良い意表のつき方だと感じました。
『律子の演技指導』編、楽しみにしております。
劇中劇の設定はとても使い易く、
またアイマスの場合はメインキャラがアイドルなので、
ドラマ撮影という設定もとても自然に組み込める一方で、
使い方如何によっては夢オチレベルのガッカリ感に襲われるので、
それをどう回避するか、というのが捻り所だと考えております。
そこへ来て小鳥さんを出して『妄想オチ』と相互干渉を起こさせ、
結果として現実に帰結させるというのは良い意表のつき方だと感じました。
『律子の演技指導』編、楽しみにしております。
途中でピヨピヨ出てきた時点で、肩すかしか…。と思っていたら
あれっ実は肩すかしじゃなかった!?というドンデン返しでしたねw
すでに撮影は最終回まで撮り終えていると聞いて(ry
仲良しなのは良いことだと思います(キリッ)
あれっ実は肩すかしじゃなかった!?というドンデン返しでしたねw
すでに撮影は最終回まで撮り終えていると聞いて(ry
仲良しなのは良いことだと思います(キリッ)
一体誰得? と聞かれたら きっと皆得っすよねww
きっと出演した涼ちん辺りも ・・・あの辺りいいよなぁとか
思ってるんじゃないかなとww そして涼ちんの男の恋人は誰なんだとw
実際このオチというか結末に関しては、嘘からでたなんとやらというか
こういう関係だからこそこういう話を引き受けたのかなと
卵が先か鶏が先かという感じです^^
きっと出演した涼ちん辺りも ・・・あの辺りいいよなぁとか
思ってるんじゃないかなとww そして涼ちんの男の恋人は誰なんだとw
実際このオチというか結末に関しては、嘘からでたなんとやらというか
こういう関係だからこそこういう話を引き受けたのかなと
卵が先か鶏が先かという感じです^^
ピヨ助も一本取られることもある、ってことでしょうかw
ドラマパートの台詞回しが好きですね。確かに昼ドラ。
まぁ、普通なら掴み合いになるところがまさかの展開。
そして「ああ、そういうことかよ!」と思わせる小鳥さん。
お話の小道具が綺麗に噛み合って、ラストが凄く印象的。
ええい、俺も本当はこう言うSSが書きたいんじゃ!w
でも書けないので、人様の作品で2828するのです。
ごちになりやす!
ドラマパートの台詞回しが好きですね。確かに昼ドラ。
まぁ、普通なら掴み合いになるところがまさかの展開。
そして「ああ、そういうことかよ!」と思わせる小鳥さん。
お話の小道具が綺麗に噛み合って、ラストが凄く印象的。
ええい、俺も本当はこう言うSSが書きたいんじゃ!w
でも書けないので、人様の作品で2828するのです。
ごちになりやす!
>>小六さん
コメントありがとうございます!
昼ドラですよ、昼ドラ!
ええ、最終回まで配信されないのは非常に残念ですね、しかたないね^^;
実は実は…でもっとこのあたりに触れるような感じで書いてもよかったかもですね。ピヨちゃんオチ使いすぎな気も…精進していかねば><
>>ガルシアP
コメントありがとうございます!
確かに劇中劇は設定が出やすいですね。自分はついついそういう方向で考えてしまいます、そして小鳥さんの妄想オチも…><
企画においては意表だけはついていこうかと(ぇ
律子の、演技指導、編…だと……さぞかし熱心な話になりそうですね!w
コメントありがとうございます!
昼ドラですよ、昼ドラ!
ええ、最終回まで配信されないのは非常に残念ですね、しかたないね^^;
実は実は…でもっとこのあたりに触れるような感じで書いてもよかったかもですね。ピヨちゃんオチ使いすぎな気も…精進していかねば><
>>ガルシアP
コメントありがとうございます!
確かに劇中劇は設定が出やすいですね。自分はついついそういう方向で考えてしまいます、そして小鳥さんの妄想オチも…><
企画においては意表だけはついていこうかと(ぇ
律子の、演技指導、編…だと……さぞかし熱心な話になりそうですね!w
>>寓話さん
コメントありがとうございます!
なんとかドンデン返しにできたんでしょうか…ピヨは用法容量を守ってやっていかないとダメですね><;
撮り終えてはいても文章化はされていないので(キリッ
アイドルたちはいくらでも仲良くなるといいと思うのです(キリッ
>>トリスケリオンさん
コメントありがとうございます!
2人の関係としてはどっちが先なんでしょうねぇw
演技の練習をしているうちに…と考えていたのですが、その前からこういう関係で息はピッタリ、というのもいいですなー。
涼ちん以外にも都合の良い男アイドルでもいればしっかりBLでいけちゃうのに(ぇ
コメントありがとうございます!
なんとかドンデン返しにできたんでしょうか…ピヨは用法容量を守ってやっていかないとダメですね><;
撮り終えてはいても文章化はされていないので(キリッ
アイドルたちはいくらでも仲良くなるといいと思うのです(キリッ
>>トリスケリオンさん
コメントありがとうございます!
2人の関係としてはどっちが先なんでしょうねぇw
演技の練習をしているうちに…と考えていたのですが、その前からこういう関係で息はピッタリ、というのもいいですなー。
涼ちん以外にも都合の良い男アイドルでもいればしっかりBLでいけちゃうのに(ぇ
>>微熱体温さん
コメントありがとうございます!
ピヨちゃんはウカツですよ?σのヮの
恋愛と嫉妬だけでグチャグチャな人間関係の昼ドラというのを想定してみました、なのでああいう展開にw
うまく落とせてたらこれ幸い<(_ _)>
2828するようなSS書いてくださいよ、微熱体温先生~^^
コメントありがとうございます!
ピヨちゃんはウカツですよ?σのヮの
恋愛と嫉妬だけでグチャグチャな人間関係の昼ドラというのを想定してみました、なのでああいう展開にw
うまく落とせてたらこれ幸い<(_ _)>
2828するようなSS書いてくださいよ、微熱体温先生~^^